孝は百行の本なり
日本には昔から、「孝行のしたい時分に親はなし」や「親の心、子知らず」「いつまでもあると思うな親と金」などといったことわざがあります。
親がなくなって初めて、「もっと孝行をしておけばよかった」と悔やんだ経験をした人は多いはずです。
今回は海外の親孝行についてのことわざをピックアップしてみましたので、心の中でよく噛み締めてみてください。
「孝は百行の本なり」は、中国の孔子が「孝経」の中で語っている言葉です。
紀元前6世紀に生まれた孔子は、キリストや釈迦、ソクラテスと並んで「四聖」と言われている人です。
孔子といえば、約400年をかけて弟子たちがまとめた「論語」が有名です。
「孝経」は孔子本人によって書かれたか、あるいは孔子の弟子の一人であった曽子が孔子の言動をまとめたと言われている本です。
「親孝行はすべての善行の基本だ」というのがこのことわざの意味で、親や先祖を敬うことを尊ぶ儒教の道徳観念がよく表れています。
両親の愛は下るばかりで上ってこない
中国や日本だけではなく、ヨーロッパでも親孝行に関することわざはたくさん見受けられます。
「両親の愛は下るばかりで上ってこない」というのは、フランスの哲学者かつ啓蒙思想家であるクロード=アドリアン・エルヴェシウスの言葉です。
エルヴェシウスは18世紀にルイ15世の王妃の筆頭侍医を父とし、裕福な家庭に生まれ育ちました。
両親の子どもへの愛は子どもの両親に対する愛に勝るという意味の彼の言葉は、著書「人間論」に記されています。
エルヴェシウスの最初の著書「精神論 De l’esprit」は、国王の許可を得て1975年に出版されました。
それにもかかわらず、カトリック側からの批判を受けて告発されるなどの弾圧を受けた経験から、彼は「人間論 De l’homme」を出版するのを戸惑っており、結局は死後1771年になってようやく日の目を見たと言うことです。
子どもの恩知らずはまむしの歯より鋭い
「子どもの恩知らずはまむしの歯より鋭い」という言葉は、シェイクスピアが「リア王」の中でリア王自身に語らせた言葉です。
深い人間洞察の中から生まれたシェイクスピアの作品には、数え切れないほどの名言が織り込まれています。
有名な悲劇「リア王」で、王国を長女と次女に譲ったのに荒野に追放されてしまったリア王が、子どもの親不孝ぶりを見て口にしたのがこのセリフです。
シェイクスピアには長女のスザンナと長男のハムネット(11歳で夭折)、ハムネットとは双子の次女ジュディスの3人の子どもがいました。
シェイクスピアが亡くなる直前、ジュディスの配偶者であるトマス・クワイニーが教会裁判所で告発されるというスキャンダルが起こり、シェイクスピア自身も子どもでは苦労したようです。