介護による離職率
自分を大切に育ててくれた親だから、介護が必要になる年代になったらできるだけ自分で介護してあげたいと考えている日本人は多いようです。
ところが、現実的な観点から見ると、介護を必要としている親を持っている世代の子どもというのはちょうど働き盛りの年代にあたります。
ですから、本腰を入れて親の面倒を見ようと思うと、自分の仕事を捨ててでも介護をしなければならないことになります。
厚生労働省が行なっている雇用動向調査によれば、2019年に介護を理由に離職した人は約10.0万人でした。
10.0万人の内訳は女性が約8.0万人、男性が約2.0万人と、女性の方が圧倒的に多くなっています。
介護離職をしないための支援制度を活用しよう
これまで積んできたキャリアを捨てて、親の介護に専念する決心をするのは並大抵のことではありません。
離職するということで収入も減ってしまい、生活の安定が得られない心配さえあります。
こんな時には、育児・介護休業法に基づいて「介護休業」を取得することも不可能ではありません。
家族介護者のための支援制度では、対象家族1人について、要介護状態に至るごとに通算93日まで休業をすることができます。
介護休業を取得した雇用保険の被保険者は、「介護休業給付金」を受給することも不可能ではありません。
給付額は、休業開始前の給与水準の67%9が原則となっています。
上限額と下限額が介護休業給付金には決められていますので、詳しいことはあらかじめ問い合わせておくといいでしょう。
介護者に対しては勤務時間の短縮などの措置も取られていますので、完全な離職を考える前に、制度を上手に利用することが大切です。
例えば深夜業に関しては、介護者が申し出た場合、雇用側は深夜(午後10時~午前5時)に介護者を労働させてはいけないことになっています。
ですから、看護師などの仕事をしていて、介護のために夜勤ができない場合には、雇用側に申し出れば夜勤を免除してもらうことができます。
家族が直接介護しないほうがいい理由
「親孝行」という言葉は、日本や中国など世界的に見てもごく一部の国々で使われている言葉です。
自分のキャリアや仕事を放棄してでも親の介護をしなければならない、と思い込んでいる人は意外と多いものです。
ですが、日本では介護を必要とする人たちをサポートして介護する制度が整っているわけですから、家族が直接介護する必要はありません。
ケアマネージャーなどとよく相談しながら、親にとっても自分にとっても最良の道を探していくことが大切です。
親が元気で丈夫だった頃のイメージに固執せずに、国の制度や援助を上手に活用して、介護を自分で全部行うことが親孝行だという呪いから抜け出すことも大切でしょう。