親に犠牲を強いられていないか
「親孝行」というのは、日本独自の言葉です。
「孝」というのは「老」という漢字の下部に「子」を組み合わせたもので、子どもが老人に使えるという意味があります。
「孝」の上の部分は、髪の長い老人を横から見た形に由来しているとも言われています。
日本では、古くから両親を敬うことが美徳とされてきました。
海外でも親を思う気持ちに変わりはないのですが、日本では自分を犠牲にしてでも親孝行をすべきであるという風潮があります。
要介護になった親の面倒を見るために、自分のキャリアを捨てて仕事を辞めてしまう人も少なくありません。
自分を大切に育ててくれた親ですから、できるだけの事をしたいと思うのは当たり前です。
ところが、親の介護を重要視するあまりに、自分の人生を犠牲にしてしまう人がいることも確かです。
仕事を辞めて介護に専念しようと考えている人は、親に犠牲を強いられていないかどうか、自分の人生を諦めて親に尽くそうとしていないかどうかを今一度考えてみることが大切でしょう。
親子で境界線を共有することが大切
日本は、非常に親子心中の多い国です。
親と子の人間関係が西洋のように確立されておらず、境界線が曖昧なのが日本の親子の特徴です。
親の介護のためであれば自分の人生を諦めてでも親に尽くす、あるいは自分の子どものためならどんなことでもいとわずにするという日本人の精神性は、諸刃の刃と言うことができます。
たとえ親子であってもそれぞれ別の人格があり、別の人生を歩んでいかなければならないという現実をしっかり踏まえていれば、介護や子育てで自分を滅却してしまう心配はありません。
ところが、日本では親子の境界線を明確に意識しないことが多いので、親の介護が必要になると自分の仕事を捨ててまでも介護に専念し、キャリアを断念してしまう人が多いのです。
自分と親はあくまでも別の個性を持った人間であるということを再認識して、犠牲にならないように介護に臨む必要があるでしょう。
「親子は他人の始まり」という言葉があるように、親と子とは別の人間です。
親が高齢で介護が必要になったとしても、国の制度などを上手に利用して、介護の犠牲にならないようにすることが大切です。
親の要介護認定が下りると、介護保険を利用することができるようになります。
とはいえ、介護の一切を専門職に任せるわけにもいきませんので、自分の仕事の都合などに合わせてスケジュールを組んで行くことが大切です。
例えば土日が休みの職場で働いているのであれば、平日に訪問介護をお願いすれば安心です。
どのような介護プランを立てていくかに関しては、ケアマネージャーと話し合うのが一番でしょう。
活用できる制度はできるだけ活用して、少しでも負担を減らすことが重要です。